卒業研究
頸部の凝りと集中力の関連性に対する調査
Investigation of relevance and focus of neck stiffness
鍼灸師学科
瀧上福美 森谷鈴香 山尾侑祐
要約
同一姿勢による同一動作は頸肩部に凝りを発生させ、その際に無意識下で集中力が低下すると報告されている。そこで、頸肩部の凝りを改善することで集中力の回復及び向上することを仮定し、頸肩部の凝りに効果があるといわれている経穴に鍼刺激を行い、凝りと集中力との関連性を調査した。方法は、AB法を用い鍼無し群と鍼有り群を比較した。結果、鍼有り群において頸肩部の可動域の増加と総演算数の向上が見られた。
目的
頸部筋緊張の増加により、集中力が低下するとの報告を基に集中力の維持や回復には頸部筋緊張の緩和が必要ではないかと考えた。集中力が維持されるのであれば、効果的な学習が期待できる。そこで頸肩部の凝りに効果がある経穴を用い凝りと集中力の関連性を調査した。
方法
頸部筋緊張の指標には頸部の可動域を用い、集中力には単純な計算を指標に用いた。鍼刺激の有無(以下、鍼無し群・鍼有り群)によって起こる指標の変化を比較した。鍼刺激を行った経穴は左右の「後渓」とした。
鍼無し群
主観的な頸肩部の凝りの有無を記入させた後、他動的に頸部の可動域を測定、その後に単純な計算を20分間行った。
鍼有り群
主観的な頸肩部の凝りの有無を記入させた後、左右の後渓に鍼刺激を行い、他動的に頸部の可動域を測定、その後に単純な計算を20分間行った。
鍼無し群の測定の一週間後に鍼有り群の測定を行った。これを1クールとし計3クール行った。頸部の可動域は、前後屈・左右側屈・左右回旋の測定を行った。被験者は10名で行い、有効なデータが取得できたのは9名であった。
結果
鍼有り群において、頸部後屈・回旋に顕著な可動域増加が認められた。さらに総演算数においても、ほとんどの被験者に向上が認められた。
考察
頸部の可動域が増加することで総演算数の向上が認められた。結果より、頸部筋緊張が集中力の持続を阻害する要因となっているのではないかと考えられる。また、鍼刺激が頸部筋緊張緩和に効果があることが確認された点より、鍼刺激は集中力の回復及び向上に役立つのではないかと示唆される。