卒業研究

Change of the distance between a finger tip and floors by the Kunlun(BL60) acupuncture point stimulus by n-of-1 examination

東洋医療技術教員養成学科

多田理恵 岩本京子 千倉細香

要約

立位体前屈での指床間距離の変化に着目し、特に崑崙穴への刺鍼によるその効果の検証を目的に、個のアプローチであるn-of-1試験を用いて、4名を対象に個の効果を検証した。また、n-of-1試験を用いて、49名を対象にその平均の変化を検証した。解析はランダマイゼーション検定でp値を求め、同時に効果量(Cohenのd)を求めた。その結果、4名に対するp値の平均は0.55となり、ランダマイゼーション検定結果は両群有意差がなく、効果量の平均は-0.05となった。49名のp値の平均は0.45となり、効果量の平均は-0.14となった。

目的

鍼灸治療で腰部および下肢後面の筋肉の緊張が原因による立位体前屈の可動域制限に対して、腰部および下肢への鍼灸治療以外に遠隔部位の崑崙穴(外踝とアキレス腱の間)へ刺鍼(鍼刺激)することがある。そこで今回、腰下肢後面の筋肉の緊張緩和に伴う立位体前屈での指床間距離の変化に着目し、特に遠隔部位の崑崙穴への刺鍼によるその効果を検討した。立位体前屈は練習効果による持ち越し効果で変化する可能性があり、当該仮説を検証するには、それらの効果を考慮した無処置対照を置いた試験デザインが必要になる。そこで本校教員養成学科はその真偽を検証するために集団的アプローチとしてランダム化比較試験RCTを2009年から実技実習で行っている(例年の効果量=0.1)。それに平行して今回、個のアプローチであるn-of-1試験を行い、個での検証を行った。その過程で被験者内の信頼性(当該n-of-1試験の妥当性の相当)を測定し、また、サンプル数を増やし、その確実性を増した。アウトカム測定はp値と効果量(Cohenのd)である。

方法

東洋医療技術教員養成学科在校生の30歳、35歳、41歳女性3名、32歳男性1名を被験者対象としn-of-1試験を用いて個の効果を算出した。また、n-of-1試験の確実性を増すために、東洋医療技術教員養成学科、鍼灸師学科在校生の男性25名、女性24、合計49名(20~63歳)平均30.1歳を対象にサンプル数を増やし、その平均の変化を検証した。ランダム割付はコイントス方式を行い、そのコインの表裏でその都度の介入(コインの表は崑崙穴刺鍼、コインの裏は無処置)を決定し、8回繰り返した。使用した鍼灸針はセイリン社製の太さ0.16mm、長さ30mmである。指床間距離は計測用メジャーを使用し、診療ベッドの上に立位し測定した。単位はmm。測定は診療ベッドの高さを0とし、ベッドの高さより上位のものをマイナス、下位のものをプラスとした。解析はランダマイゼーション検定でp値を求め、同時に効果量(Cohenのd)を求めた。

結果

4名の結果は、p値の平均は0.55となり、ランダマイゼーション検定結果は両群有意差がなく、効果量の平均は-0.05となった。49名のp値の平均は0.45となり、効果量の平均は-0.14となった。

考察

n-of-1試験を用いた崑崙穴刺激による指床間距離は、無処置対照に比べ、小さな効果量で、なおかつ有意差は認められなかった。また、n-of-1試験でもランダム化比較試験と同様の結果で、崑崙穴刺激による指床間距離の改善は低いと考えることができる。

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