卒業研究

Case Study Showing Improvement in Orofacial Movement through Intervention focusing on Higher Brain Function

言語聴覚士学科

冨田亜弓

要約

言語、行為、記憶、認知など日常生活を送るうえで欠かせないものが高次脳機能である。運動の実行にも高次脳機能が関わっており対象の認知や空間内の位置取り、各感覚の統合などを行い、状況に応じた運動を組み立て、実際に運動を実行する段階に移る。本症例の場合、口腔顔面運動の困難さは失語症や運動障害の影響のみでなく高次脳機能の不活性も根底にあると考えられた。そこで他者との関わりのなかで高次脳機能の活性化を目指し、口腔顔面の運動性を高める運動訓練も並行して行った。その結果、運動を組み立てる能力と筋自体の運動性向上によって口腔顔面運動が改善したと考えられる。

目的

高次脳機能の賦活により目線や表情といった非言語的コミュニケーション能力の改善、口腔顔面の運動性改善による摂食嚥下動作の円滑化を目的とした訓練を並行して行った。

方法

70歳代、男性、右手利き(使用手は左手)。左脳梗塞後遺症にて、右片麻痺と全失語を呈していた症例に対し、高次脳機能の賦活を目的として、キャッチボールなど他者との相互的なやり取りにより完了する課題を行った。また、摂食嚥下動作の円滑化を目的とし、咀嚼・嚥下訓練など摂食動作を中心とした口腔顔面の自動的・他動的な運動を繰り返し行った。

結果

訓練初期と比較して視線が合い易くなり、稀ではあるが顔をしかめるなどの非言語的表出が見られるようになった。口腔顔面の運動性は全体的にやや向上し、特に口輪筋の短縮改善が顕著であった。咬反射の頻度が少なくなり摂食動作が訓練初期よりも円滑になっていた。

考察

本症例は全失語を呈しており、言語の理解・表出ともに困難であったが、ジェスチャーの併用により簡単な状況判断は可能であった。自身の意思は主に頷きを用いることで示していたが、指示が理解できていないため正確さは不安定であった。また、廃用症候群との診断も受けており、運動能力や精神活動の面でも低下がみられた。訓練中、視線が合いにくく注意が逸れてしまう場面が時々みられたことから、高次脳機能の基盤となる注意や意欲の低下が考えられた。摂食嚥下面では、咬反射や、口腔顔面から頸部、胸部にかけての筋緊張が高く、口腔顔面運動が困難であった。そこで、コミュニケーション能力の改善と摂食動作の円滑化を目標に訓練を行った。まず、他者へ注意を向け、状況に応じた行動をとることを目的にキャッチボールなど言語での指示が不要で状況判断が容易な課題を行った。また、口腔顔面の筋についても、咀嚼・嚥下訓練を中心として運動性向上を目指した。その結果、高次脳機能、換言すれば中枢神経系の賦活により、異常に高まっていた筋緊張と病的反射である咬反射が抑制されたと考えられた。さらに、注意・集中、表情の変化といったコミュニケーション面にもわずかながら改善がみられた。
ニューヨーク大学医療センターRusk研究所の神経心理ピラミッドによれば、情報処理や記憶、推論といった高次レベルの機能が働くためには、その基盤となる覚醒や発動性、注意・集中という基礎レベルの安定が必要となる。本症例の場合、この基礎レベルから不安定さがみられ、その結果、運動を組み立てるといった高次脳機能の働きが低下していると考えられた。そこで、運動を組み立てる高次脳機能の活性化と、筋の運動性を高める訓練を並行して行った。機能的側面と器質的側面の両面からのアプローチが口腔顔面運動の改善に繋がったと考えられる。麻痺や筋の廃用などによる運動障害に対し、言語聴覚士として運動訓練のみでなく高次脳機能からのアプローチも行っていくことが必要になると思われる。

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