卒業研究
スパイロメータによる閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)スクリーニングの検討
Examining Spirometry for Screening Obstructive Sleep Apnea Syndrome
臨床検査技師科
鈴木優之 鹿島有紗 廣瀬大輔
要約
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(以下:OSAS)は自覚症状が少なく、周囲に指摘されるまで放置されているのが現状である。OSASのスクリーニングとして有用とされるFlow-Volume曲線上のsaw-tooth pattern検出と携帯型・睡眠呼吸モニターと比較し、OSASに対する感度・特異度を検討した。今回saw-tooth patternによるOSASの判定は感度が低かったが、特異度は好成績が得られた。
目的
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(以下:OSAS)は自覚症状が少なく、終夜睡眠ポリグラム検査(以下:PSG)の不便さなどから放置されることが多く、潜在患者数は200万人との報告もある。呼吸機能検査のFlow-Volume曲線上に出現する連続した速い振動波(以下:saw-tooth pattern)(図1)はOSAS患者に特異的に出現するとされている。OSASのスクリーニングとしてFlow-Volume曲線測定の有用性について検討することを目的とした。
方法
大阪医科大学付属病院においてOSASが疑われた患者112例を対象とし、スパイロメータの周波数特性を市販設定の20Hzから100Hzに変更しsaw-tooth patternの検出率を挙げ、OSASに対する感度、特異度を携帯型・睡眠呼吸モニターと比較し検討した。
結果
- PSGでは全112例中103例に無呼吸・低呼吸指数(以下:AHI)が5回/hr以上認められOSASと診断された。内訳は軽症(5≦AHI<15)が7例、中等症(15≦AHI<30)36例、重症(30
- saw -tooth pattern検出率は、OSAS患者103例中に60例で、感度は57.3%、特異度は88.9%。重症度別は、軽症で71.4%、中等症で52.3%、重症で58.3%。AHIが5未満の非OSAS群においても11.1%検出された。
- PSGによるAHIと携帯型・睡眠呼吸モニターによる呼吸障害指数(RDI)との比較は、OSAS患者103例中91例がRDI 5以上を示し、感度は55.6%、特異度は94.4%であった。
考察
saw-tooth patternによるOSAS判定の感度は携帯型・睡眠呼吸モニターに劣るが、特異度は好成績が得られた。saw-tooth patternは咽頭部での脂肪等の振動によって起こるとされているが、睡眠時無呼吸の原因は余剰組織以外の狭窄もあるため、感度が58.3%に留まったと考えた。しかし、迅速性、簡便性、経済性に優れておりOSASスクリーニングに有効であると考えた。