卒業研究
攅竹穴への鍼刺激による視力改善RCT
Improving Eyesight RCT by Stimulating the Santikuketu Using Acupuncture
東洋医療技術教員養成学科
田島大奨
要約
眼精疲労からくる視力の低下を攅竹穴への鍼刺激により、視力が改善されるかといった目的と尺度の違いによりデータがどう変わるかという目的に今実験を行った。健康成人58名を研究対象に試験群・無刺激群の2群に封筒法によりランダムにわけ実験を行った。結果は少数視力・右Cohen’s d【-0.1335】effect size r【-0.0666】左Cohen’s d【0.4269】effect size r【0.2088】となりlogMAR Aは右Cohen’s d【-0.5626】effect size r【-0.2708】左Cohen’s d【-0.0443】effect size r【-0.0221】となった。これは鍼刺激によって視力改善していることが示唆できる。少数視力の介入前後を比較するとどちらも視力改善があったのだが左少数視力のみ改善というデータになっている。これによりlogMAR視力が使われるべきということが示唆できる。
目的
スマートフォンやタブレットの発展により、それらが視力に悪影響を及ぼす要因となっていると懸念されている。そこで眼精疲労から来る視力の低下を攅竹への鍼刺激により改善できないかと考え、本実験を行うことにした。さらにもう一つの目的として、尺度の違いによりデータがどう変わるかを二つ目の目的とした。少数視力は順序尺度であり、logMAR視力は間隔尺度である。間隔尺度は加減乗除をすることのできる尺度であるが、順序尺度は本来加減乗除することのできない尺度であり、データは信頼性の欠けるデータになることが多いとされている。そこで少数視力を間隔尺度とみなして計算を行いlogMAR視力と比較してどうデータが変わるのかというのを2つ目の目的として本実験を行った。
方法
今回は大阪医療技術学園専門学校の健康成人58名を研究対象に研究を行った。介入は足の太陽膀胱経の攅竹穴への刺鍼を行った。介入は両側行い、鍼はセイリン社製0.16mm×30mm1番鍼を用いた。今実験には、logMAR視力表と少数視力表を使用した。測定は少数視力から行い、両目の視力の測定後、logMAR視力表の測定を行った。今実験には封筒法を用い試験群と無刺激群の2群にランダムにわけ試験を行った。試験群は視力測定後、鍼を両側の攅竹に刺入し、得気を得て1分間置鍼を行い、抜鍼後、再度視力測定を行った。コントロール群は視力測定後、1分間安静状態で過ごしてもらい、再度視力測定を行った。
結果
結果は、少数視力・右Cohen’s d【-0.1335】effect size r【-0.0666】左Cohen’s d【0.4269】effect size r【0.2088】となった。logMAR Aは右Cohen’s d【-0.5626】effect size r【-0.2708】左Cohen’s d【-0.0443】effect size r【-0.0221】となった。少数視力では左目のみ改善というデータになり、logMAR視力では数値が小さくなるほど視力が良くなっているという点から、効果量のマイナスを取り除くことができ右目で中等度の効果があることがわかった。
考察
今回は少数視力と比較するためにlogMAR Aを基準とし考察していく。視力改善されたのは、攅竹穴に刺鍼することにより、眼輪筋など目周囲の血流が改善され、代謝産物の排除を行うことができ視力が改善されたのではないかと考える。さらに攅竹穴はアシュネル反射に関与する眼窩上神経の近くに存在するため副交感神経が活発になり、毛様体筋に作用を及ぼし水晶体の動きが改善され視力が改善されたのではないかと考える。尺度の違いによる計算では、少数視力の介入前後を比較すると左右とも改善されていたが、左の少数視力のみ改善といったデータになっている。少数視力は本来順序尺度であり、加減乗除ができない尺度であるが、加減乗除したことによりこのようなデータがなったと考える。このことにより、本来視力の研究においては少数視力ではなく、加減乗除のできるlogMAR視力を使用するべき事が示唆される。