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卒業研究

Consideration of Automobile Driving by Elderly People with Mild Higher Brain Dysfunction

言語聴覚士学科

間渕あゆみ

要約

右視床出血を呈した症例において、各種検査を行った結果、病識低下、見当識障害、注意障害、視覚的情報処理能力低下等の高次脳機能障害を認め、自動車運転再開の許可は下りなかった。しかし、日常生活は自立レベルであり、本人の強い希望から運転再開を目指し、交換日記やナンバープレースなどを用いてリハビリを行った。その結果、各機能の改善が見られたことから、適切な訓練の介入が、自動車運転にかかわる高次脳機能の改善に有効であることが示唆された。今後、PT、OT、STといった身体機能・高次脳機能の専門家による積極的介入が行われ、高齢者のQOL維持や社会的問題となっている自動車事故の防止に繋がることが期待される。

目的

本症例は、81歳男性右手利き、CTによって右視床出血と診断された。日常生活は自立レベルで、主訴は自動車運転の再開を切望されている。しかし、初期評価において、病識低下、見当識障害、注意障害、作業記憶低下、視覚的情報処理能力の低下、これらから引き起こされる談話障害などの高次脳機能障害を認め、医師からの運転再開許可は下りなかった。QOL向上のため、自動車運転の再開を目指し、訓練することとなった。

方法

病識と見当識の改善、注意機能向上、記憶能力向上、視覚的情報処理能力の向上、談話能力向上を目的として、リアリティオリエンテーション、交換日記、立体ブロックパズル、符号課題、ナンバープレース、2コマ漫画の説明を行った。

結果

TMTやWAIS-Ⅲの符号課題において得点が上がり、病識、見当識障害、注意障害、作業記憶、情報処理能力、談話障害が改善傾向にあった。しかし、近時記憶においては依然低下を認めた。

考察

現在、高齢者における自動車事故が社会的問題となっており、平成29年3月から加齢による認知機能の低下に着目した臨時認知機能検査制度等が見直された。しかし、現時点では、高次脳機能障害者の自動車運転再開の可否を、医療関係者が総合的かつ適切に判断するための明確な基準がない。そのため、臨床現場では様々な複数の検査が行われており、その中でも特にTMTとWAIS-Ⅲが有用とされている。渡邉(2017)は安全な運転を実現するためには、病識、注意機能、作業記憶、遂行機能、視覚情報処理を要すると報告している。本症例は夫婦ともに足が悪く、運転できないことが著しくQOLを低下させることから、上述の運転に必要とされる高次脳機能に対し訓練を行った。その結果、TMT-Aでは著明な改善を認め、WAIS-Ⅲの符号課題においても評価点が向上した。これらの結果は、適切な訓練の介入が、自動車運転にかかわる高次脳機能の向上に有効であることを示唆している。本症例のように日常生活が自立した軽度の高次脳機能障害を認める高齢者に対し、運転能力という視点からの医療的な介入は、一部の大学病院等でしか行われていない。社会的問題となっている自動車事故防止の観点からも、高齢者の運転能力に対する評価やアプローチは検討していく必要がある。今後PT、OT、STといった身体機能・高次脳機能の専門家による積極的な介入が行われ、高齢者のQOL維持や事故防止に繋がることが期待される。

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