卒業研究

Changes in the Psychological Impression of Language Due to Color

医療心理科

鐘谷唯 清水理沙 西畑里紗 槙田朝香

要約

本研究ではあまり良い印象を持たれていない言葉に関して、好印象を持つとされる色彩で文字を表記した際、ネガティブな印象が緩和されるのか研究・調査を行った。その結果、有彩色にすることで心理的印象が良くなることが明らかとなった。好印象を与える色彩を用いることで、パンフレットやポスター等の啓発活動の際、疾病などあまり良い印象を持たれることのない言葉の印象緩和に有効活用できると考えられる。

目的

色はそれぞれに抽象的な印象を持っていることが分かっている(仁科、2015)。従来の精神科病院や薬のポスターは無彩色が多く、「暗い、怖い」とネガティブな印象を持たせることがあった。気づかないうちにそれを見た人の印象が偏り、特にそれは専門的な知識を持たない人の印象形成にネガティブな影響を与えていたことが考えられる。そこで本研究では、言葉の印象を色彩を用いることによって変化させることが可能なのか、また黒文字と比較し、緩和された印象を持たれやすい色とは何か特定することを目的とした。

方法

研究方法

「精神疾患」と表記されたプリントを配布後、印象に関する形容詞とその対義語を提示し、どの程度当てはまるか5段階評価を用いて測定するセマンティック・ディファレンシャル法(以下、SD法とする)を用いた。フォントに関しては石原、熊坂らの『フォントの違いによるイメージの伝達効果(2002)』を参考にゴシック体を使用した。文字色は仁科らの『若者世代の色彩感覚に関する実態調査(2015)』を参考とし、緑・黄緑・オレンジ・ピンクを使用することとした。

調査対象

大阪医療技術学園専門学校 7学科 1年生264名(専攻科を除く)
各学科で比較的専門知識による先入観が少なく、一般の人々に近い回答が得られると考え、1年次のみを対象とした。

調査時期

平成29年10月中旬~平成29年11月

調査手順

1回目は黒文字で「精神疾患」と表示したプリントを配布し、心理的印象をSD法で検証する。1日以上日をあけ、2回目は有彩色(緑・黄緑・オレンジ・ピンク)で表示したプリントで配布しSD法を行った。

結果

医療心理科と他学科ともに、黒よりも有彩色の方がポジティブな印象になることが分かった。黒と有彩色で最も大きな差が見られたのは「暗い‐明るい」で、暗い印象から明るい印象へと変化していた。「無名‐有名」に関しても黒より有彩色がポジティブな印象を持つ評価となった。色彩別には有意差が見られなかったものの、ピンクが最もポジティブな印象と評価された。

考察

色彩のポジティブなイメージを加えることで、言葉の印象がポジティブに変化することが明らかとなった。パンフレットやポスター作成において、有彩色が持つ印象を考慮することで、ネガティブな言葉の印象を少しでも緩和することができると考えられる。最後に、本研究で使用した4色以外の色を用いた場合では、どのような印象が生じるのかが残された課題であるため、今後の検証が必要であると考えられる。

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