大阪医療技術学園専門学校 | 医療・福祉・心理の専門学校

卒業研究

Significance of Irregular Antibody Screening using an Enzyme Technique

臨床検査技師科

新井建史 晒令奈 野村修平

要約

現在我が国では不規則抗体を検出する方法として不規則抗体スクリーニング検査・同定検査を行っている。その方法には生理食塩液法、酵素法と間接抗グロブリン(間接クームス)法があり、並行して行うことで抗体検出の感度を高めている。特に酵素法と間接クームス法を併用する施設は多い。酵素法の利点はRh系の不規則抗体、特に産生初期の抗体検出感度に優れ、臨床的意義の高い抗体の見落としを防ぐとされている。しかし酵素法は非特異的反応があること、冷式抗体を検出しやすいなどがあげられ、時にその精査による輸血遅延を起こす可能性がある。本研究では、近畿大学病院輸血・細胞治療センターにて過去3年間で行われた不規則抗体スクリーニングを調査し、酵素法は現段階で実施の意義はあると結論付けた理由を報告する。

目的

本研究では、近畿大学病院輸血・細胞治療センターの過去3年間における不規則抗体スクリーニング検査状況から臨床的意義の高い不規則抗体の検出状況、酵素法を省略した場合の影響を調査することで、酵素法の必要性を検討する。

方法

近畿大学病院での過去3年間(2016年4月~2019年3月)での不規則抗体スクリーニング検査の件数41,625件(内患者数14,244名)の調査を行い臨床的意義の高い不規則抗体からその検出方法を統計する。その結果より注目した抗E抗体保有患者のうち、検査初頭は酵素法陰性であったが、輸血治療を行う過程で時間経過とともに酵素法陽性となった事例があった為、その追跡調査を行い、その後の治療への影響を調査した。

結果

患者数14,244名(検体数41,625件中)に対し、抗体検出陽性の患者数409名、酵素法のみ陽性となった患者数49名。その検出不規則抗体は抗E抗体のみであった。抗E抗体保有患者の内、輸血開始から3年間で複数回不規則抗体検査を実施した患者の一例を検証、その結果、輸血当初は不規則抗体検査は陰性であったが、同年12月までに酵素法のみに反応した抗体を検出した。以降抗E抗体と判断し、翌年の3月末以降にPEG法でも同抗体を同定できた。輸血に使用された赤血球製剤は当初抗原陽性陰性問わずにランダムで投与を開始したが、3月以降の抗E抗体と判断後はE抗原陰性血を投与している。以上のことから当患者の抗E抗体は輸血による免疫により獲得したものであり、抗体産生初期の抗E抗体をいち早く検出した検査方法は酵素法であった。

考察

結果から、患者からの抗E抗体の検出が酵素法で行えていること、輸血治療において酵素法の実施から治療内容を変更できた事実が存在することから現段階で酵素法は必要であると結論付ける。しかし酵素法実施による非特異反応・自己抗体を証明する為の吸収試験実施やそれに伴う的・費用的負担は迅速な輸血治療を実現する妨げとなり可能であれば省略できることに越したことはない。酵素法の必要性を否定する為には、酵素法を省略する条件(輸血歴・妊娠歴が無いなど)を病院独自で設定しその検査マニュアルを作成すること、現在最も高感度とされるPEG法に変わる新たな高感度LISS法を自動分析に組み込める技術開発を行う事が必要であり、それらを持って酵素法の是非を今一度検討できるものと考える。

臨床検査技師科ページを見る

 
 

各学科についてもっと詳しく知りたい方はこちら!

資料請求

オープンキャンパス

〒530-0044 大阪市北区東天満2-1-30
tel.06-6354-2501 fax.06-6358-7945

CONTACT

0120-78-2501

0120-78-2501

大阪医療技術学園専門学校

大阪医療技術学園専門学校© All rights reserved.

bot bot