卒業研究
大阪国際がんセンターにおける新型コロナウイルスの検査とその流れ
Study on COVID-19 Testing and Procedures at the Osaka International Cancer Institute
臨床検査技師科
宇治明日香 西村紀香
要約
新型コロナウイルス感染症はSARS‒CoV‒2 に感染することにより起こる感染症である。2019 年末より猛威を奮っており、世界的に影響を受けている。大阪国際がんセンターでは、SARS‒CoV‒2 の検出方法として抗原検査とPCR 法を用いている。大阪国際がんセンターに来る患者はがんを患っている場合がほとんどであり、新型コロナウイルスに感染した場合のリスクが高い。また、がんの治療が遅れることも患者にとってリスクが高い。そのため、感度・特異度ともに高い検査が求められる。それぞれの病院で、来院する患者の傾向は異なっている。その病院の特性に適した検査方法や検査機器を採択することが大切であると考えられる。
目的
2019 年末より、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行している。終息の目処はまだたっていないこと、今後新たな感染症が発生する可能性も十分にあることから、新型コロナウイルスについて学ぶことは未来の医療人として大切であると考えた。
SARS–CoV–2 を検出する検査方法は様々あるが大別すると、①遺伝子関連検査、②免疫検査に分類される。さらに、これらの方法をもとに様々な検査機器が各社から販売されており、感度・特異度や手技の簡便さ、所要時間の違いなどを考慮すると多数の選択肢が存在する。医療機関において何を基準にそれらの中から採用する検査を定めたのか、本研究では大阪医療国際がんセンターを一例として、検査方法の選択と実際の検査の流れについて考察することを目的とした。
方法
病院における検査方法の選択基準や、今回の感染症に対応する場合で重視すべき点について、大阪国際がんセンターでの事例から考察した。
結果
大阪国際がんセンターでは新型コロナウイルスの検出にPCR 検査と抗原検査を行なっている。検査の流れは、発熱などコロナ様症状のある患者にはまず抗原検査を行う。抗原検査はPCR 検査に比べて所要時間が短いので、感染の疑わしい患者をより早期に検出できるためである。その結果が陽性であれば、RT-PCR 法は実施せず検査結果は確定される。陰性であれば、RT-PCR 法にて陰性確認試験を行う。「SARS-CoV-2 抗原検出用キットの活用に関するガイドライン」では、抗原検査が陰性であれば必ずしも陰性確認は必要ないが、保有するウイルス量の少ない陽性者の見逃しを防ぐために、陰性確認を行なっている。当センターは悪性腫瘍を専門とした病院である。そのため免疫が低下している患者が他施設と比べて多く、新型コロナウイルス感染症にかかった場合の重症化リスクが高い。よって、PCR 検査を追加で行うことでより精度の高い検査結果が出せるようにしている。
考察
大阪国際がんセンターではがん患者が多く来院しており、これらの人たちは抗がん剤治療等で免疫力が低下しているため重症化するリスクが高い。従ってSARS-CoV-2 を検出するために感度・特異度ともに高い検査が求められる。それぞれの病院によって来院する患者の傾向は異なっている。そのため、各病院が重視すべき点が異なってくる。各病院の特性に適した検査方法や検査ルールを採択することが大切である。