卒業研究
刺さない鍼の施術による顔面部の美容効果について
~小里式鍉鍼による施術前後の比較~
Effects of Needless Techniques of Acupuncture on Facial Beauty ~Comparison of Pre and Post Kozato Teishin Procecures~
鍼灸美容学科
古賀名那未 中川珠那 中村乙女 松田光
要約
近年、リフトアップなど美容を目的に、顔面部に刺鍼する鍼灸院が増えている。顔面部に鍼を刺すと僅かではあるが痛みや内出血を起こすこともある。そのことから内出血や痛みを伴わない刺さない鍼を使用し顔面部の美容効果を検証した。本校学生18 名を対象に刺さない鍼である小里式鍉鍼を使用し、施術前後の顔の状態を比較した。結果、リフトアップや小顔に効果を感じている被験者が多く、ほうれい線の変化は感じていない被験者が多かった。表情筋は皮筋であり、皮膚のみへの刺激でも表情筋への刺激が可能であり、結果、リフトアップや小顔につながったと考えられる。
目的
近年、リフトアップなど美容を目的に、顔面部に刺鍼する鍼灸院が増加している。女性を中心に顔面部に多くの刺鍼をした写真をSNS に掲載したり、女性向け雑誌に顔面鍼の特集が組まれたりするなど、美容鍼のニーズが高まってきているといえる。一方で、多くの美容鍼は顔面部に直接鍼を刺すため、僅かではあるが、痛みや内出血を起こすことがある。こうしたことから、「痛そう」、「怖そう」といったイメージを持つ人もおり、美容鍼以外も含めた鍼灸利用率は1 割にも満たない。そこで、顔面部に鍼を刺さず皮膚刺激を主体とした刺さない鍼である接触鍼を使用し、刺さない鍼刺激で顔面部に美容効果が得られるかどうか検討することとした。
方法
対象は本校女性学生18 名、平均年齢19 歳とし、本校附属鍼灸センターにて実施した。刺激方法は刺さない鍼の1 種である小里式鍉鍼を使用し、打鍼法の要領で先端を叩打しながら顔面をすべらせ施術した。皮膚割線に沿って顔面の半分を施術し一旦効果を確認してから、もう半分の施術を行った。実験手順は施術前に鏡にて11 か所の顔面の状態を確認してもらい、施術後に再度鏡にて状態を確認してもらい、施術前後の状態の変化にて効果を検証した。
結果
途中で1 名が実験中止となったため17 名にて検討した。「フェイスラインのカーブ」、「フェイスラインのカーブの始まる位置」、「顔の中心から両端までの顔の幅」が17 人中15 人と多くの被検者が効果を感じている。反対に「ほうれい線の状態」は17 人中2 人しか効果を感じていない。これらのことから刺さない鍼の刺激でもリフトアップや小顔の効果はすぐにみられるため、顔面部への美容効果はあると考えられる。
考察
刺さない鍼の刺激でリフトアップに効果を感じられた理由として、表情筋は皮膚に停止しているため、皮膚の刺激だけでも表情筋を刺激することが可能であり、結果として表情筋が引き締まりリフトアップした可能性がある。一方で、ほうれい線に対し効果を感じられなった理由として、被験者が若く、ほうれい線がそれほど深くないことが考えられる。
今回は刺さない鍼のみの施術であり、また被検者の主観評価のみであったため、今後は刺す鍼との比較や主観評価と客観評価の比較をし、より詳細な効果を検証していきたい。