卒業研究

~学習アプリケーションによるランダム化比較試験~

Examination of Lesson Introduction Programs ~Randomized Controlled Trial of Learning Applications~

東洋医療技術教員養成学科

上尾慎 川口直秀 川村淳子 下村純也

要約

2016 年教育白書によると「基礎学力の不足」「自発性の不足」「学習意欲の低下」「主体性の欠如」など、授業に対する生徒と教師間の意識の差が指摘されている。また、web 授業の開始など生徒達が授業に集中出来ない状況が生じており、学習意欲の低下が懸念される。その一方で、学習アプリケーションが生徒の意欲の向上や継続に重要な役割を果たす可能性があるとの報告もある。これらの状況を受け、鍼灸学校の生徒を対象とし、アプリケーションを用いた「モチベーションの喚起・維持」が有効かどうかを確認するために、授業導入に対しランダム化比較試験を行ったところ、クラス編成(男女差)により教育効果に差がある事が示唆される結果となった。

目的

学習意欲が低下しているという近年の生徒達の現状を踏まえ、アプリケーションを用いた授業導入を行うことで生徒たちの学習意欲の向上や喚起が有効かどうかを確認する。この研究から生徒の「自ら学ぶ力」の向上に繋がる授業や学習プログラムを検討する事が、本研究の目的である。

方法

介入群(A 群)、非介入群(B 群)ともに20 代〜40 代の健康成人55 名(男性16 名・女性39 名/大阪医療技術学園専門学校)の3クラスを対象に行った。各々のクラスのA・B 両群ともに事前に書面および口頭で内容の説明をし、被験者の同意を得てから実験を行った。
はじめに、手持ちの端末にアプリケーション『Unblock Me』をダウンロードし、A 群は授業導入としてパズルゲームを8 分間実行する。その間、B 群には「スマートフォン等端末類には触らないよう」指示し、待機してもらう。A・B 群ともに、試験前と試験直後にVAS(Visual Analogue Scale)を用い、その時点でのモチベーションを「やる気」の度合いとして記録する。これらを①②③3 つのクラスに対し、全て同じ手順で行った。その後、二群の効果量を比較し、考察を行った。
※ A・B 群は、『QuickCalcs』によりランダムに割り付け、VAS の評価者は試験内容をマスク化された状態で測定を行った。t 検定は『VassarStats』、効果量はCohen's d と点双列相関係数r を『Effect Size Calculators』を用いて計算し、重回帰分析には『HAD16』を使用した。※ 測定には全て、フリーサイトのソフトを利用した。

結果

結果、効果量は、全体:d=0.21,r=0.11(クラス①:d=0.66,r=0.32,クラス②:d=-0.14,r=0.07,クラス③:d=0.57,r=0.27)であった。これを男女で比較した場合においては、男性:d=0.45,r=0.22、女性:d=0.15,r=0.08、となる。また、効果量のSD(標準偏差)は、介入群(男性:8.14,女性:23.12)、非介入群(男性:15.20,女性:14.91)であった。

考察

p 値は、関連の強さを表すが、関連の大きさを示すものではない。故に、実質的な効果量の尺度であるCohen’s d と点双列相関係数r を求め、A・B 群を比較した。結果は、d値,r値において小~中程度の効果量であった。また、クラス間で数値の差がみられた為、重回帰分析による要因分析を行ったが、有意差は無かった。そこで、男女別に効果量を求め、SD(標準偏差)をグラフ化したところ、介入群に男女差が大きく見られ、箱ひげ図においては、女性に顕著なばらつきが見られた。この様に、本研究に関しては、対象となるクラス編成(特に男女比)により授業導入による教育効果に差がある事が示唆された為、その点において注意が必要であるといえる。

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