卒業研究
視力改善に対する鍼と灸の比較
Comparison of Acupuncture and Moxibustion for Improving Vision
鍼灸美容学科
浦田茉弥 河野和未 芝唯花 津崎隆 坪川尚子

目的
近年、SNSの普及や新型コロナウイルスの感染拡大によるWeb授業や在宅勤務などが増え、スマートフォンやパソコンなどのデバイスの使用頻度が増えており、パソコン等の作業増加によって目に悪影響があるのではないかと考え調査しところ、学校保健統計調査によると小・中・高生の裸眼視力が1.0未満の割合が2014年から現在にかけて増加していることが分かった。視力低下や眼精疲労で悩んでいる人に対して、過去の研究では鍼治療の効果を検証している文献が多く、灸治療の効果を検証している文献がほとんどみられなかたので、鍼と灸の効果の違いについて比較検討することとした。
方法
被験者10名を鍼グループ、灸グループの2グループに分け、各グループ週1回を4回、計4週間行う。施術は鍼・灸ともに同じ経穴を使用し、局所治療として太陽穴、弁証治療として太衝穴を選穴した。鍼グループは太陽にセイリン社製ディスポーザブル鍼0.16×30mmを5mm程度刺入、太衝にセイリン社製ディスポーザブル鍼0.18×40mmを10mm程度刺入し10分間置鍼した。灸グループは太陽・太衝ともに釜屋もぐさ本舗のカマヤミニ弱を使用し、4経穴に1壮ずつ、5分間施灸した。実験手順は両グループともに 1.主観アンケート、2.視力検査、3.施術、4.視力検査、5.主観アンケートの順で行った。主観アンケートはVASを使用し、目の見えやすさ、目の開きやすさ、目の疲れ具合の3項目を調べた。視力検査はランドルト式視力表を使用し、眼鏡やコンタクトレンズは着用したままで行い、度数は毎回同じものを使用した。
結果
視力検査では鍼グループは左右とも5人中4人は視力改善が見られたが、1人は低下した。鍼グループでは最大で1.0の視力改善が見られた。灸グループは左右とも5人中4人の視力改善が見られたが、1人は変化が見られなかった。灸グループでは最大で0.9の視力改善が見られた。裸眼とコンタクト着用で比較しても結果に大きな違いは見られなかった。主観アンケートでは両グループともに3項目全ての改善がみられ、眼精疲労の軽減にも繋がった。
考察
鍼・灸刺激ともに目の周りの血流改善、筋緊張緩和が見られ視力改善、眼精疲労軽減に繋がったと考えられる。特に灸では温熱刺激が血管に働きかけ、自律神経が活発になりより眼精疲労が軽減したと考えられる。鍼と灸ともに今後の課題としては効果を維持することにある。そのために家庭でのセルフケアとしてカマヤミニなどの温灸を使用することを奨励することも重要である。
参考文献
- 藤田眞衣ら: 視力に対する鍼灸治療の効果. 大阪医療技術学園専門学校卒業研究論文集,P18~P22,2014年
- 前田見太郎ら: 視力回復に及ぼす鍼治療の効果. 全日本鍼灸学会雑誌43巻3号, P120∼P124,1993年