卒業研究
果皮の廃棄部分を用いた化粧下地の提案
Proposal for Foundation Primer Utilizing Discarded Fruit Peel Components
薬業科
伊部菜月 鱗川寧々 木村友葵 瀧石朱梨 中村栞愛莉
目的
世界ではまだ食べられる食料がおよそ13億トン、そのうち日本ではおよそ612万トンも廃棄されている。これを国民1人当たりに換算すると、毎日お茶碗1杯分の食料を捨てていることとなる。そこで近年提唱され、日本でも多くの企業などが取り組んでいるSDGsの17の目標から12番目の「作る責任・使う責任」という項目の中にある食品ロスの問題に着目した。この廃棄されている食材をほかの事に利用できないか、また学内で学んだ化粧品の知識、化粧品実習の内容と掛け合わせ果皮の廃棄部分から色素を抽出し化粧下地を作成できないかと考え、抗酸化作用をもつアントシアニンを含み、品種別生産量が最も多く含まれる巨峰を用いて化粧品下地を提案することとした。
方法
電子天秤を用いてビーカーに巨峰の果皮40g、同様のビーカーにホールピペットを用いて蒸留水20mLを量り取り、ウォーターバスで5分間加熱後ガーゼに移して絞り、エキス抽出後ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し巨峰エキスを作成した。考案した処方に従い化粧品下地を作成した。処方の着色には人工色素(ウルトラマリーン)を用いた化粧下地Aと巨峰エキスを用いた化粧下地Bの2通りを作成した。このうち巨峰エキスを用いた化粧下地Bのみに安全性試験として24時間のパッチテストを実施した。さらに本校薬業科、計60名を対象に化粧下地Aを基準とした化粧下地Bのべたつき、トーンアップ、使用感(悪いと答えた方は改善点も記入)、保湿力、ツヤ感、肌刺激、においの7項目をそれぞれ5段階で評価するアンケート調査を実施し、巨峰の果皮を用いた化粧品下地の評価を行った。
結果
化粧品下地A、化粧品下地Bは考案した処方に従い良好な化粧品下地を作成することができた。巨峰エキスを用いた化粧品下地Bを使用したパッチテストの結果では塗布した部分に腫れ、赤み、かゆみなどの異常な反応はいずれも見られなかった。化粧品下地のアンケート調査結果では、多くの項目において化粧下地Aと化粧下地Bの使用感に大きな差がないといった回答が多く見られたが、化粧品下地Aよりも化粧品下地Bのほうが高評価である項目がいくつか見られた。また使用感が悪いと答えた回答者からは、べたつきをなくすと良い、べたつきが気になるといったべたつきに関する回答が多数見られた。
考察
パッチテスト、アンケート調査の結果より、巨峰エキスが肌に刺激をもたらす可能性が低い点や、人工色素と同様又はそれ以上の効果が確認できたと考える。また結果より巨峰エキスは紫色素に置き換えることが可能であるといえる。アンケート結果の使用感の悪さに関しては、果皮を使用していることからべたつきの原因が糖によるものである可能性があり、更なるべたつき抑制について検討し処方の改良を行いたい。
参考文献
- ピーターD.ピーターセン:SDGsビジネス戦略.日刊工業新聞社,2019
- 津久井亜紀夫:食品中のアントシアニン色素について.日本食生活学会誌9巻1号9-13,1998